こんにちは、けあむすび編集部です。
今回は、介護疲れ・介護うつ・悩み対策について、学んでいきます。

在宅での毎日の介護は、体力だけでなく精神的にも大きな負担となります。「介護疲れ」を感じながらも、家族のために頑張り続ける介護者は少なくありません。しかし、疲れやストレスを溜め込むと心身の健康を損ない、介護そのものの継続が難しくなってしまいます。今回は、介護疲れの原因や、介護のストレス対策、活用できる介護サービスについてご紹介します。自分を守りながら介護を続けるために、できることを一緒に考えてみましょう
介護疲れとは
介護により、体調を崩したり睡眠不足になったりするなど、心身にさまざまな不調が生じる「介護疲れ」。厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査(2022)」によると、主な介護者は同居の親族(父母・配偶者・子・子の配偶者)が45.9%と半数近くを占めています。
また、要介護者と同居の主な介護者について、年齢の組み合わせを見ると、「60歳以上同士」の割合は77.1%、「65歳以上同士」は63.5%、「75歳以上同士」は35.7%であることが分かりました。このように、介護疲れは、高齢化社会を迎えるに日本全体にとって深刻な問題になっています。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査」IV 介護の状況
介護疲れの定義
介護疲れとは、在宅介護や長期的な介護によって心身に慢性的な疲労が蓄積している状態を指します。体の痛みや睡眠不足に加え、精神的なストレスや社会的な孤立感が重なり、心身共につらい状態です。対策せずに放置すると「介護うつ」に発展することもあります。
毎日の介護がもたらす影響

毎日の介護がもたらす負担には、大きく分けて、身体的負担、精神的負担、社会的負担の3つが考えられます。ひとつずつ見ていきましょう。
身体的負担
入浴介助やベッドから車椅子への移乗、排泄介助といった動作によって、関節痛や腰痛、肩こり、手首や指の腱鞘炎などを発症しやすくなります。さらに夜間の見守りや不規則な生活リズムが重なり、睡眠不足や慢性的な疲労に悩まされる人も少なくありません。
その結果、自分自身の健康管理が後回しになってしまう傾向があります。長期にわたる負担は、日常生活の動作にも影響を及ぼし、介護者自身が活動を制限せざるを得なくなるケースもあるのです。
精神的負担
特に認知症の方のケアでは、感情のコントロールに疲弊したり、先の見えない将来への不安や孤独感を抱えたりすることがあります。加えて、介護者は「自分がやらなければ」という強い責任感を持つことが多く、自分の気持ちを後回しにしてしまいがちです。
こうしたストレスが積み重なると、感情の起伏が激しくなったり日常のちょっとした出来事でも強いストレスを感じたりするなど、イライラや落ち込みが続いて「介護うつ」につながることもあります。
社会的影響
仕事と介護の両立が難しくなり、介護離職を余儀なくされるケースは決して珍しくありません。また、介護のために趣味や交友関係を断念することで、社会的なつながりが希薄になり、孤立感が強まってしまうケースもよくあることです。
さらに、介護者は社会的役割の変化や孤独感によって「自分の存在価値」について悩むこともあります。介護と家庭、仕事の両立に追われる中で、他者との交流や社会参加が減ることで、精神的な疲弊が増幅し、生活の質が低下するリスクがあります。
介護疲れを放置すると起こること
介護疲れをそのまま放置してしまうと、介護者本人だけでなく、介護を受ける家族の生活にも深刻な影響を与えます。
心身の疲労を自覚しながらも「自分が頑張らなくては」と無理を続けてしまう人は多いですが、その結果、介護を続けられない状態になってしまっては本末転倒です。介護疲れを放置するとどんなことが起きるのかを知っておきましょう。
介護うつの発症
長期間にわたるストレスや孤独感の蓄積により、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠、食欲不振といった症状が現れます。うつ症状が進行すると、日常生活や介護を続けることが難しくなり、専門的な治療が必要になるケースが少なくありません。
さらに、介護うつは身体症状として頭痛や肩こり、倦怠感、胃腸症状などを伴うこともありますが、体調不良の原因が精神的ストレスにあることに気づきにくい場合があります。早期の相談や支援制度の活用が重要です。
介護放棄(ネグレクト)や虐待につながる可能性
心身の限界を超えたときに起こり得るのが「介護放棄(ネグレクト)」や「虐待」です。決して悪意がなくても、疲労やストレスで冷静な判断ができなくなり、必要な介助を怠ったり、感情的に声を荒げてしまったりすることがあります。
これは介護者にとっても強い罪悪感を残し、さらに精神的な負担を増大させる悪循環につながります。虐待や放置は誰にでも起こり得ることと想定して、早めのサポート利用が重要です。
介護者自身の健康悪化
介護者自身の健康悪化も深刻です。腰痛や肩の痛みといった身体的な不調だけでなく、生活習慣病の悪化や免疫力の低下など、長期的に健康を損なうリスクがあります。最悪の場合、介護者が病気やけがで介護できなくなることもあり、家族全体が困難な状況に追い込まれます。
慢性的な睡眠不足やストレスの蓄積は、うつ病や高血圧、糖尿病といった生活習慣病の悪化にもつながります。定期的な健康チェックや医療機関の利用も、介護を続けるうえでの重要な自己管理のひとつです。
介護離職
社会的な影響としては「介護離職」が挙げられます。仕事と介護を両立できず、退職を選ぶ人は少なくありません。収入の減少やキャリアの停滞、経済的不安は大きな問題です。経済的に困窮すれば、介護サービスを十分に利用できなくなり、さらに介護の負担が増えるという悪循環を招くことになるでしょう。
介護離職は長期的なキャリアなど、介護者の将来設計にも大きな影響を及ぼします。職場での介護休暇制度や柔軟な働き方の相談は、介護の初期段階からしっかり行うと良いです。
介護疲れの原因とよくある悩み

大切な家族のためとはいえ、介護は想像以上に心身に負担がかかります。「気づけば自分の生活がすべて介護中心になっていた」という声もよく聞かれます。
ここでは、多くの介護者が直面しやすい悩みを整理しました。自分だけの問題ではないと知ることが、対策への第一歩になります。
介護期間の長期化
在宅介護は数年単位で続くことも多く、なかには10年以上に及ぶケースもあります。
「いつまで続くのだろう」という先の見えない不安は、心身に大きな重荷となり、疲労やストレスを増幅させます。特に高齢の親や認知症の方を介護する場合、終わりの見えない日々が続くことが多く、精神的な疲労は計り知れません。
長期化することで、介護者自身の体力や健康に影響が出るケースも少なくありません。たとえば、長時間の立ち仕事や抱き上げ動作が続き、腰痛や肩こり、慢性的な疲労感に悩まされる方もいます。また、「自分の老後はどうなるのか」という将来への不安も重なり、焦燥感や無力感が湧いてくるという声もよく耳にします。
生活リズムの乱れ
要介護度が高い場合や認知症介護では、24時間体制での対応が必要になりがちです。夜間の見守りや急な対応に追われ、生活リズムが崩れてしまう人も少なくありません。たとえば、夜中に徘徊する方やトイレの失敗が頻繁にある方の場合、慢性的な睡眠不足に陥ります。このような状況が続くと、判断力や集中力が低下し、日常生活や仕事にも影響が出ることも多いでしょう。
また、介護中は、急な転倒や体調不良など、予測できない事態に即座に対応する必要があり、精神的な緊張感が一日中続く状態になります。こうした負担は、介護者自身の健康リスクを高め、うつ症状や不安感を引き起こす要因のひとつです。「眠りたいのに眠れない」という状態が続くと、体調不良や精神的な不安定さにつながります。
サポート不足
「兄弟が協力してくれない」「仕事をしながら自分だけが介護をしている」そんな声は珍しくありません。地域の介護サービスや制度を知らずに、すべてを自分で背負い込んでしまうケースも多く、孤独感が大きなストレス要因になります。
中には、周囲の理解を得られず自分を犠牲にして介護を続けてしまうケースも・・・。こうした精神的負荷は、介護者のモチベーション低下や疲労感の慢性化につながります。
自分の時間の欠如
介護を優先するあまり、自分の趣味や休息を後回しにしてしまう方は多いです。「自分だけ楽しむのは申し訳ない」という気持ちが強くなると、気分転換の機会を失い、ストレスが限界まで積み重なってしまいます。趣味や外出などの時間を意図的に確保することは、精神的な安定や介護の質を保つうえでも重要です。
介護疲れで限界を感じる前に、レスパイトケアを有効活用しよう

「もう無理かもしれない」と思う前に、制度やサービスを知っておくことがとても大切です。施設に数日間入所するショートステイや日中だけ施設で過ごすデイサービスなどのレスパイトケアなど、介護者が心身を休めるための制度を活用しましょう。
「休むことも介護の一部」と考えることが大切です。
介護保険サービス
デイサービス、ショートステイ、訪問介護、訪問看護など、要介護度に応じてさまざまな支援が受けられます。ただし、利用回数や内容には制限があるため、介護者自身の負担軽減効果を最大化するには、計画的な活用が重要です。
【利用の流れ】
- 要介護認定の申請(市区町村の介護保険課に申請)
- 認定調査と主治医の意見書をもとに「要介護度」が決定
- ケアマネジャーとケアプランを作成
- サービス事業者と契約し、利用開始
介護保険サービスについては、こちらの記事も参考になります。
介護保険外サービス
介護保険外サービスは、介護度に関係なく利用できる点が大きな特徴です。
たとえば、日常生活の細やかな支援、外出時の付き添い、買い物や通院の代行など、介護保険ではカバーしきれない部分を柔軟にサポートしてくれます。「今回だけお願いしたい」、「少しだけ手伝ってほしい」というときに頼れる存在です。
地域の支援制度
地域包括支援センターは、介護に関する総合的な相談窓口です。制度の紹介に加え、ボランティアや民間サービスとの橋渡しも担っているため、「どこに相談したらいいかわからない」というときに最初に訪ねてみると良いでしょう。
地域包括ケアシステムについてはこちらでも詳しく解説しています。
経済的支援
介護は経済的な負担も大きいため、経済的支援制度を確認しておくことも大切です。
介護休業制度を利用すれば、働きながら一定期間の介護に専念することができますし、高額介護サービス費制度を活用することで、費用の負担を軽減することもできます。
「お金の不安」で介護がつらくなる前に、制度を知っておくことが心の余裕につながります。
介護休業制度
会社員であれば、家族の介護のために最大93日間の休業を取得できる制度です。雇用保険の被保険者で、一定の要件を満たす方は、休業開始時賃金日額の67%相当の介護休業給付金が支給されます。休業開始予定日の2週間前までに事業主に書面を提出する必要があるため、利用を検討する場合は余裕を持って申請するようにしましょう。
高額介護サービス費制度
介護サービス利用料の自己負担が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。負担限度額は、利用者の所得に応じて異なります。また、訪問サービスやデイサービス、ショートステイ、介護施設サービスなどにかかる費用は対象となりますが、施設における居住費や食費、日常生活費などは、高額介護サービス費制度の対象外です。利用前に確認しましょう。
高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間に利用した医療費と介護費の自己負担合算額が一定の金額を超えると、自己負担分を軽減してくれる制度です。年収に応じて自己負担限度額が設定されており、超えている場合は払い戻しを受けることができます。自治体によっては、申請の案内書を届けてくれる場合がありますが、通知をしない自治体もあるので、「医療費と介護費の自己負担額が多くなっているな」と思ったら、市区町村の担当窓口に相談することがおすすめです。
介護者のストレスを軽減する方法

介護の疲れやストレスを完全になくすことは難しいかもしれません。しかし、早めに相談したり、短時間でも休養やリフレッシュの時間を確保したりすることで、心身の負担を軽減できます。小さな工夫の積み重ねが、長期的な介護生活を支える大きな力となります。
早めの相談
介護の悩みは一人で抱え込まず、家族や友人、ケアマネジャー、地域包括支援センターなどに相談しましょう。早めの声掛けが、ストレスの悪化や孤立感を防ぎます。また、専門家に相談することで、利用可能なサービスや制度の情報を得やすくなり、日常の負担軽減につながります。
休養を取る
少し早めに寝るように心がける、温かいお風呂に入るなど、意識的に「体を休める時間」を確保することが重要です。短時間でもゆったりと過ごすだけで、心が軽くなり、介護に向かう気力を保てます。また、短時間でも効果的な「ながら休養」もおすすめです。家事や介護の合間に深呼吸や軽いストレッチを取り入れるだけで、心身の緊張を和らげる効果があります。
介護疲れを軽減するためには、心だけでなく身体の健康も欠かせません。食事を抜かない、適度な運動をする、定期的に健康診断を受けるなど、自分の健康管理を意識しましょう。睡眠不足が続くと判断力や体力が低下し、介護の質も下がってしまいます。周囲の協力を得ながら、無理なく自分の体を守ることが、長期的な介護生活を支える基盤となります。
リフレッシュする
たとえば、朝の30分だけでもコーヒーを飲みながら読書をする、近所を散歩して自然に触れる、音楽やラジオで好きな番組を聴くなど、日常の中で「自分だけの時間」を作るようにしましょう。趣味や好きな活動に時間を使うこともおすすめです。手芸や絵を描く、映画やドラマを観る、庭仕事やガーデニングを楽しむなど、自分に合った方法で気持ちを切り替えることがストレス軽減に効果的。加えて、マインドフルネスや簡単な瞑想を取り入れると、気持ちの整理や感情の安定に役立ちます。小さな変化でも、積み重ねることで介護中の精神的な疲労を大きく和らげることができるでしょう。
日記やメモに気持ちや介護の状況を書き出すことも、ストレス軽減に役立ちます。日々の介護で感じた不安や苛立ちを書き出すことで感情が整理され、気持ちの切り替えがしやすくなるほか、介護記録として行動や体調を残すことで、ケアマネジャーや家族と情報を共有しやすくなり、サポートを受けやすくなる効果も期待できます。
介護保険外サービスを利用する
休養やリフレッシュが必要だとはいえ、介護の合間に自由な時間を作るのは簡単ではありません。そんなとき、介護保険外サービスを使用して少しでも負担を減らし、自分の時間を確保しましょう。短時間だけの利用でも心の余裕が生まれ、結果的に介護の質向上にもつながります。
介護保険外の自費サービスについてはこちらの記事もご参照ください。
クラウドケア介護保険外サービスの紹介
介護は、毎日の暮らしの中で突然「ちょっと助けてほしい」という場面が登場します。しかし、介護保険サービスでは家族の家事や外出支援までは対応できません。加えて、要介護度による制限や申請の手間もあり、「今すぐお願いしたい」と思ってもすぐに使えないこともあるでしょう。
そんなときに心強いのが、インターネットから簡単に依頼でき、最短で即日対応も可能な「クラウドケア」の介護保険外サービスです。介護保険の枠にとらわれず、必要なときに必要な分だけ利用できるため、「介護と暮らしの隙間」を柔軟に埋めてくれる存在として、多くの介護者に選ばれています。
介護・介助手伝い
排泄や入浴介助といった身体介護から、服薬の見守りまで対応してもらえます。「今日は腰の調子が悪くてお風呂介助が難しい」「薬をきちんと飲めているか不安」など、日常でちょっと困ったときに頼れるサービスです。
たとえば、介護者に急な仕事が入って、明日すぐにヘルパーに来てほしいという依頼や、介護者の体調不良で病院に行きたいので今から2時間後に来てほしいなど、緊急の依頼にも対応。最短1時間後の訪問が可能です。
通院付き添い・院内介助
病院への送迎はもちろん、診察時に一緒に話を聞くことや、会計や薬の受け取りまで任せられます。介護者が付き添えないときや、本人が一人では不安なときに大きな安心につながります。
大柄な利用者の通院で、介護者一人では転倒のリスクがあり不安だという場合には、男性の介護士を手配することも可能です。利用したい理由に合わせて、柔軟に適切な対応を行います。
また、手術後の病室内での見守りや付き添いを24時間体制で行った実例もあります。家族だけでは対応が難しい長時間介護も、クラウドケアならお手伝いが可能です。
日中・夜間の見守り介助
日中は、見守りや外出時の介護、話し相手、夜間は安否確認やトイレ誘導、夜中に頻繁に起きる認知症の方への対応や、水分補給の介助、体位変換などを代行します。泊まり込みで夜間の介護をお願いできるため、介護者自身がゆっくり眠る時間を確保できます。
なかには、老人ホームなどの介護施設への入居に抵抗があるという方もいらっしゃいます。しかし、自宅での介護を続けるのもしんどい…そんなときにも、クラウドケアの長期間の見守りや介護サービスを利用することで、自宅で過ごす時間を長くすることができるでしょう。
家事手伝い・家事代行
掃除、洗濯、買い物、食事準備など、家事全般のサポートが可能です。特に調理サポートは、介護する側・される側の両方の健康につながります。また、庭の草刈りや電球を取り換える、ペットの散歩や餌やりなど、生活の中にある細かなニーズにも対応可能。
介護に追われて家事まで手が回らない日でも、クラウドケアを活用すれば生活環境が整えられます。「今日は疲れたから掃除だけお願いしたい」という小さなニーズにも対応できる点が強みです。
その他の生活支援
冠婚葬祭への付き添いや旅行の同行、ペットのお世話まで、「こんなことまで頼めるの?」というような要望に応えられるのがクラウドケアの大きな特徴です。
たとえば、車椅子を利用する方のコンサート観賞(電車やタクシー利用時の付き添い)、認知症の方が趣味のフィットネスジムに通い続けるための往復介助・ジム内での見守りなど利用者の「したいこと」を大切にしたサポートを行っています。
介護保険では対象外となる部分を補ってくれるため、介護する人・される人、双方の「生活の質」を守ることが可能です。
まとめ

在宅介護は、心身共に大きな負担となるものです。しかし、介護者が無理を続けてしまうと、介護うつや健康悪化など深刻な事態につながりかねません。大切なのは、一人で抱え込まないこと。制度やサービスをうまく活用しながら、自分の時間や休養を確保する工夫が必要です。
介護保険内のサービスだけでは十分でない場合、介護保険外サービスを取り入れることで、より柔軟にサポートを得ることもできます。介護者自身が幸せであることが、結果的に介護を続ける力につながるのです。