こんにちは、けあむすび編集部です。
今回は、認知症徘徊の見守りサービスのテクノロジーを提供する、ビット・パーク株式会社にインタビューを行いました。

左:プロダクト事業部 兼 広報担当 遠藤祐美氏
認知症の徘徊は、本人の命に関わるだけでなく、家族や介護現場の不安と負担を一気に高めます。いざという時に「どこにいるのか」が分からない――。
そんな状況を少しでも減らすため、2017年から「認知症徘徊GPSセンター」(運営:ケアミックス株式会社)の見守りサービスにGPS技術を提供してきたのが、ビット・パーク株式会社です。
同社のモットーは「+Something(プラスサムシング)」。顧客に“嬉しい驚き”を届ける提案を心がけるといいます。
「なぜ見守りが必要なのか」「何ができるのか」など、現場のリアルをビット・パーク代表取締役 野口修氏、プロダクト事業部 兼 広報担当 遠藤祐美氏にインタビューを行いました。
企業理念「+Something(プラスサムシング)」が、介護の不安をほどく
――まず、ビット・パークさんと、今回お話を伺う「見守りサービス」について教えてください
ビット・パークは、Webやグラフィック、動画制作からシステム開発まで、幅広く手がける会社です。
私たちはモットーとして「+Something(プラスサムシング)」を掲げていて、単に言われたものを作るのではなく、“嬉しい驚き”がある提案を大切にしています。技術の会社、というより「クリエイティブ」がキーワードです。
今回の見守りサービスの取り組みでは、認知症の徘徊に不安を抱えるご家族や施設の方々を支えるために、GPSの仕組みを活用しています。
私たちは2017年から、ケアミックスさんが運営する「認知症徘徊GPSセンター」にGPS技術を提供していて、徘徊リスクへの対応を裏側から支える立場です。
――「裏側から支える」というのは、具体的にどんな役割なのでしょうか?
実際に利用者さんや施設さんへの案内・サポートを行うのはケアミックスさんで、私たちは端末と連動する管理の仕組みや、見守りを成り立たせるシステムの部分を担っています。
「いざという時に探せる」「早めに気づける」といった形で、現場の安心につながることを重視しています。
徘徊の見守りが「いま」必要
――介護や認知症にまつわる課題が増える中で、見守りの必要性はどこにあると思いますか?
急速な高齢化に伴って、認知症による徘徊や独居高齢者の孤立が深刻化しています。
行方不明や事故のリスクは本人の命を脅かすだけでなく、家族や介護現場に大きな不安と負担を与えます。
「いざという時に探せる」ことは、ただ便利というより、安心を支える前提条件になってきていると思います。

――この「見守りサービス」では、どのようなことができるのでしょうか
大きく言うと、「現在地が分かる」「生活圏から出たことが分かる」。
徘徊は“出てしまってから探す”だけでなく、生活圏からの離脱を知らせる通知で、早めに気づけることも大きい。
それから施設や自治体の場合、複数の端末を連携して一括管理できるのも重要です。
――実際に使うとなると、現場ならではの難しさもありますよね。
徘徊対策は「端末を持ってもらう」こと自体が難しいケースが少なくありません。
そこで、ケアミックスさん側で、専用シューズや御守りケースなど“持たせやすい工夫”が用意されています。
「できるだけ自然に」「負担が少なく」――ここは、まさに現場の知恵が効いているところだと思います。


――実際に、探すことができた事例があるのでしょうか
はい、あります。実際に、認知症の高齢者の方が山の中へ入ってしまったケースがありました。
2月の長野県、気温は低く、夕方になると一気に暗くなります。
警察や地元の消防団も動く中で、移動の履歴が手がかりになり、「どこから山に入ったか」「いまどの辺りにいるか」を絞り込めたんです。
結果的に、日が暮れるギリギリのところで発見につながりました。ご家族の不安を思うと、こちらも胸が詰まる出来事でしたね。
―― “地図上の情報があるだけで、探し方が変わる”のは大きいですね。
そうですね。「闇雲に探す」から、「範囲を絞って探す」へ。これは現場で効いてくる感覚だと思います。
現在地という“点”だけでなく、移動履歴が“線”で見えたことで、『どこから山に入ったか』『どちらへ向かったか』の見当がつき、捜索範囲を絞れたんです。
―― GPSというと「今いる場所が分かる」というイメージですが、今回のお話では“点だけでなく線で探せる”ことが重要だと感じました。どういう点が違うのでしょうか?
徘徊の場面では、「今ここにいる」という“点”の情報だけだと、どうしても後手になりやすいんです。見た瞬間はそこにいても、数分後には動いている可能性がある。
一方で、移動の履歴が“線”として見えると、「どちらの方向へ向かったのか」「どこから生活圏を出たのか」が分かります。つまり、探し方が変わるんですね。
山でのケースもそうですが、「闇雲に探す」から「範囲を絞って探す」へ変わる。この差が、発見までの時間や、関わる人の負担を大きく左右します。
―― “線で分かる”ことが、現場の判断を助けるんですね。
そうですね。徘徊は、季節や時間帯によっても危険度が変わります。暗くなる前に見つけられるかどうかが勝負になることもある。
だからこそ、「どっちへ向かったか」が分かるだけでも、現場の動きが早くなると思います。

―― 見守りは安心につながる一方で、「監視されているようで抵抗がある」という声もあります。
おっしゃる通りで、見守りは便利さだけで語れるものではないと思っています。
特に認知症の場合、ご本人が「見守られている」ことを十分に理解できないこともありますし、とはいえ“監視”という言葉は強すぎる。
私たちが大切にしたいのは、ご本人の生活や尊厳をできるだけ損なわずに、安全を確保することです。
例えば「外出してはいけない」「縛る」といった方向ではなく、外に出ること自体を否定せず、もしもの時に早く気づける・早く探せる仕組みにする。
見守る側の安心はもちろん大事ですが、それと同じくらい、見守られる側が“人として扱われている”感覚を守ることが大事だと思っています。
――ご本人やご家族に、どう説明するのが良いのでしょうか?
目的が「管理」ではなく「安全」だと伝わることが大切だと思います。
「どこにいるかを知りたい」ではなく、「迷った時に、早く迎えに行けるようにしたい」「事故を防ぎたい」といった言葉の方が、ご家族の気持ちとしても自然です。
また、毎日細かく追いかけるためではなく、“いざという時の備え”として持っておく。
その距離感を保つことが、尊厳と安心のバランスにつながると感じています。
――まさに、企業理念「+Something(プラスサムシング)」を感じます。
私たちはモットーとして「+Something(プラスサムシング)」を掲げています。
顧客に嬉しい驚きを届ける提案を心がけていて、単に作るだけではなく、その先の使われ方まで想像して工夫を重ねる、という感覚です。
見守りの文脈で言うと、“ただ場所が分かる”だけで終わらせない。
生活圏からの離脱・進入通知、移動履歴、複数人管理など、運用のストレスを減らす工夫が積み重なって「安心」につながる。
その積み重ねが、私たちなりの「+Something」だと思っています。
――自治体との連携もあると伺いました。
はい。千葉県いすみ市の「徘徊高齢者家族支援事業」で連携が始まっています。
個人だけで抱え込まず、地域や行政とも連携して支えていく形が広がるのは、とても重要だと感じています。
――最後に、介護をしている方、家族、医療・介護職の方々へメッセージをお願いします
徘徊の不安は、いざ起きた時に一気に日常を揺さぶります。
だからこそ、「もしもの時に探せる」「いざに備える」仕組みが、社会のインフラとして当たり前になっていくことが大切だと思っています。
そして、見守る側・見守られる側の負担が少ない形で、“安心が続く”仕組みを広げていきたい。
そうした取り組みが、支える人が少なくなる時代の助けになると信じています。

けあむすび編集部より
ビット・パーク社では、同様のテクノロジーを活用し、防災ソリューションなども提供しています。
認知症の徘徊見守りは、「位置が分かる」だけではなく、早めに気づける通知や、複数人をまとめて見守れる運用、そして何より「探せた」経験が支える安心があります。
企業理念「+Something(プラスサムシング)」が示すのは、不安を減らすための“ひと工夫”の積み重ねでした。
「点」ではなく「線」でたどれることが、見つけられる可能性を高める――。安心のかたちは一つではありません。
介護の不安を一人で抱え込まない選択肢として、見守りのあり方を見直してみてもよいかもしれません。