こんにちは。けあむすび編集部です。
離れて暮らす親御さんや同居している両親に、「少し様子が違うかも」と感じたことはありませんか。
認知症の初期には、物忘れだけではない日常の小さな変化がサインとして現れることがあります。
本記事では、介護福祉士での経験をもとに、ご家族が気づきやすい変化やご本人の自尊心を守る関わり方、相談先の選択肢を解説します。

離れて暮らす親御さんへの久々の訪問や、あるいは同居生活の中で、
「数分前に話した内容を、また楽しそうに話し始めた」
「運転中に目的地を忘れて戸惑っている」
「以前は几帳面だったのに、同じ服ばかり着ている」
といった小さな違和感に、心がざわつくことはありませんか。
「もしかして認知症?」という不安がよぎっても、大切に育ててくれた親を病気だと決めつけたくない葛藤を抱えるのは、あなたが親御さんを想っている証拠です。
この記事では、介護福祉士として現場経験のある筆者が、以下3点を具体的に解説します。
- 認知症初期に見られやすい変化
- ご本人の自尊心を守る関わり方
- 相談先の選択肢
※本記事は診断を目的とするものではなく、気づきのヒントを整理したものです。気になる変化が続く場合は、専門機関へご相談ください。
認知症の初期症状と気づきやすい変化|年相応との違い

親の変化を感じたとき、まず頭をよぎるのは「年相応のものなのか、それとも認知症なのか」という疑問ではないでしょうか。
「名前が出てこない」
「何を買うか思い出せない」
こうした記憶のあいまいさは、加齢による年相応の自然な変化として多いでしょう。
一方で認知症には、脳の機能低下による『中核症状』という特性があります。そして、年相応の物忘れとは、現れる変化の質が異なると考えられています。
年相応の範囲を超えた日常生活の違和感を具体的に見ていきましょう。
認知症初期症状チェックリスト
次のような変化に心当たりはありませんか。
- 同じ話を何度も繰り返す
- 約束や予定を忘れているが本人に忘れているという自覚がない
- 今まで行ってきたリモコン操作などの手順が分からなくなった
- 慣れている場所で道に迷うことがある
- 身だしなみや服装に無頓着になった
- 言葉が出にくくなったり会話がかみ合わないことがある
※2つ以上当てはまる場合は、認知症の初期症状の可能性もあります。あくまで目安ですが、気になる場合は早めに専門家へ相談してみましょう。
認知症の症状については、厚生労働省でも情報が公開されています。
『体験ごと』記憶に残りにくくなる(記憶障害)
例えば、家族との電話の場面です。外食の話を楽しく聞いた10分後、また全く同じ話が始まったとしましょう。
年相応の物忘れでは名前を思い出せないことはあっても、ヒントがあれば思い出せることが多いとされています。
一方で認知症では、『さっき話した』という体験そのものが記憶に残りにくくなるのが、認知症初期に見られやすい変化のひとつと言われています。
時間や場所の感覚がつかみにくくなる(見当識障害)
事例の一つとして、親御さんの車に同乗中のことです。いつものスーパーへ向かう途中で「あれ、どこへ行くんだったっけ」とつぶやくことがあります。
年相応であれば、日付や曜日を少し混同することはあっても、周囲の景色や状況から「ここに行く途中だった」と思い出せることが一般的のはずです。一方で認知症の疑いがある場合では、『今どこで何をしているのかという状況そのものが把握しづらくなる』と言われています。
手順や段取りをこなすことが難しくなる(実行機能障害)
身だしなみに関して、気温にそぐわない服装をしたり、同じ服を着続けることが見られることもあります。
年相応であれば、服選びが多少雑になっても、その日の気候に合わせて必要な衣類を揃えて着替えることは可能でしょう。
一方で認知症が疑われる場合には、衣服を身につける手順そのものが難しくなり、着替えなくなる、もしくは着る順番がちぐはぐになることが考えられます。
さらに季節感も読み違えたりするなど、衣類の扱いに根本的な混乱が生じている可能性があります。
言葉や道具の扱いがもどかしくなる(失語・失認・失行)
言葉が出るまで間があいたり、使い慣れたリモコンなどの道具に戸惑ったりすることがあります。
年相応であれば、時間をかけることで言葉を思い出せたり、繰り返し使うことでリモコン操作なども再び行うことができるでしょう。
一方で認知症が疑われる場合には、言葉の意味そのものが理解できない、あるいは使い慣れた道具の用途が分からなくなるなど、対象への認識自体ができなくなる可能性があります。
年相応であれば、『思い出すための引き出し』が少し重くなっていると言えそうです。ヒントや時間、工夫があれば思い出せることもあります。
認知症では『体験そのものが記憶に残りにくくなる』と考えられています。そして、慣れた場所や時間の感覚、手順の理解、言葉や道具の扱いなどが記憶から消えていくと言えそうです。そのため、ヒントを聞いてもピンとこなかったり、当たり前にできていた手順や使い方が根本的に分からなくなったりすると言われています。
認知症に関しては、厚生労働省の認知症施策でも案内されています。
出典:厚生労働省『認知症施策』
「もしかして」と思ったときにご家族が最初にできる関わり方

親の変化を目の当たりにすると、家族という距離の近さから、
「また忘れたの?」
と指摘したくなるかもしれません。しかし、ご本人が一番不安を感じています。まずはご家族が、その気持ちに寄り添い、自尊心を守りながら安心できる環境を整えましょう。
ご本人が安心できる関わりは、不安や混乱を和らげ、生活の質を保つことにつながるとされています。
否定や指摘から入らない『言い換え』のコツ
大切なのは『事実』ではなく、安心感です。
NG例
「また忘れたの? 何度も言っているのに!」
OK例
「大切な予定だから、一緒に確認してみようか」
『忘れたこと』を問題にするのではなく、『一緒に確認する』スタンスなら、ご本人は否定されたと感じずに済みます。
生活の中でさりげなくサポートする
「今まで通りに暮らしたい」という親御さんの気持ちを大切にしながら、精神的な負担を減らす工夫をしてみましょう。
メモやカレンダーの活用
一目でわかる場所に予定を書く。
予定の共有
「今日はお買い物だね」と、会話の中にさりげなく予定を盛り込む。
物の定位置を一緒に決める
「財布の場所はここにしようか」と、困りごとに寄り添う形で環境を整える。
こうした工夫は、『自分でできている』という自信を守ることにつながるでしょう。
変化を『記録』しておく
親御さんの小さな変化をメモに残しておくことをおすすめします。これは後の受診や相談において、医師に状況を正確に伝えるための貴重な資料になります。
いつから
最初に違和感を覚えた時期
どんな変化
同じ話を繰り返した、季節外れの服を着るようになったなど具体的に
頻度
毎日か、体調が悪いときだけなのか
スマホやスケジュール帳の端に、日付とともに一言残しておくだけで構いません。
客観的に記録することで、ご家族自身の心の整理にも役立ちます。
受診や相談は『早いほう』がちょうどいい

『これくらいで相談してもいいのかな』と感じたときこそ、受診や相談を検討する一つの目安になります。
早期に専門家とつながることは、ご本人の『その人らしさ』を最期まで守るための、大切な準備期間になります。
認知症の早期発見・早期対応については、厚生労働省の認知症施策推進大綱(概要)でも取り上げられています。
出典:厚生労働省『認知症バリアフリー関連施策の動向について』
相談先の選択肢
かかりつけ医
持病や普段の様子を理解しているため、相談しやすく必要に応じて専門医を紹介してもらえます。
地域包括支援センター
『高齢者の暮らしを支える総合窓口』です。介護予防サービスや生活上での相談から、地域におけるさまざまなサービスにつなげてもらえます。
もの忘れ外来
専門検査により、初期の記憶障害の発見や正確な状態把握が期待できます。
認知症に関する相談先は、厚生労働省においても紹介されています。
本人が受診を嫌がられるとき、ご家族も一歩が踏み出せない時の考え方
ご本人が受診を拒む場合は無理に説得せず、「健康診断の一環として相談してみようか」など、抵抗感をやわらげる声かけが有効とされています。
どうしても受診されない場合は、ご家族だけの相談でも構いません。専門家に状況を話すだけで、ご家族の心の負担は軽くなり、今後の対策を具体的に練ることができます。
早めの受診を勧める一番の理由は、病名を知ることではなく、
「誰と、どんな風に過ごしていきたいか」
「何を大切にし、何を家族に遺したいのか」
こういったことを考える、かけがえのない時間を作るためです。
親御さんの意思をしっかりと確認できるうちに、これからの生活について話し合うことです。
それは、最期までその人らしく生きるための時間になります。
想いをくみ取り、できるだけ想いに寄り添うことが、後悔の少ない関わり方への第一歩と言えるでしょう。
こちらの記事も参考にしてください。
ご家族だけで抱え込まないための選択肢

「親のことが心配だけれども、自分だけで何とかしなきゃ」と思い詰める必要はありません。
公的な介護保険サービスでは、カバーしきれない細かな困りごとに寄り添う『介護保険外サービス』という選択肢があります。
介護保険外サービスについては、以下2つの記事でも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
例えば、以下のような場面で力を借りることができます。
通院の付き添いや病院などへの受診同行
「親は受診したほうがいいのは分かっているけれど、私が仕事で平日の付き添いが難しい」という場合、訪問ヘルパーが自宅から病院までの移動や受付手続きなどをサポートする『通院介助』を利用できます。
また、診察中の付き添いや待ち時間の見守りなど、介護保険では対応が難しい部分については、介護保険外サービスを活用することで柔軟に対応できるケースもあります。
受診同行を利用する詳細については、こちらで紹介しています。
離れて暮らす親御さんの見守り
遠方に住んでいて頻繁に様子を見に行けない場合でも、介護保険外サービスを活用することで、通院の付き添いや日常的なサポートを現地のヘルパーに依頼することができます。
実際に、海外在住のご家族が、グループホームに入居する親御さんの通院付き添いを定期的に依頼しているケースもあり、『直接関われない不安』を補う手段として活用されています。
支援の実際の様子は、以下の事例で取り上げています。
短時間からのスポット利用
『すべてを任せるのではなく、少しだけ手を借りたい』という場合にも、数十分〜1時間単位での利用が可能です。
実際に、洗濯や掃除など日常の一部だけを定期的に依頼することで、「自分でできる部分は維持しながら、負担だけを軽くする」といった使い方もされています。
短時間利用の具体的な事例については、こちらをご覧ください。
「最近、忘れっぽくなったかな?」という不安を抱えながら遠方で過ごすのは、ご家族にとっても大きなストレスです。一人で抱え込まずプロを頼ることはご両親も、ご家族も、笑顔で過ごすための前向きな選択です。穏やかな毎日を続けるための、確かな一歩になります。
まとめ

認知症の初期症状は、暮らしの中の小さな変化から始まります。
戸惑うご本人を否定せず寄り添うことは、ご本人の安心感に直結します。同時に、ご家族も、「自分一人で」と抱え込み、疲れ切ってしまう前に周囲を頼る勇気を持ってみてください。支援を受けることは決して『手抜き』ではありません。
介護保険だけでは届かない『受診同行』や『短時間の見守り』には、クラウドケアといった保険外サービスも有効です。プロを頼り、心にゆとりを持つことが、親子で良い関係を保つ秘訣です。まずは一歩、相談することから始めてみませんか。