こんにちは。けあむすび編集部です。
本日は、2026年6月4日(木)に開催された、「第13回JR東日本スタートアッププログラムDEMODAY」のようすについて、レポートいたします。

2017年から始まった「JR東日本スタートアッププログラム DEMODAY」は、JR東日本スタートアップ株式会社が主催する共創プログラムのイベントで、今回で13回目を迎えました。
社会課題の解決に向けた新規事業の創出や社会実装を推進する取り組みの発表の場として位置づけられています。
近年は、鉄道会社単独ではなく、複数企業やスタートアップとの共創により、スピードと実装力を高める動きが加速しています。
今回のDEMODAYでも、その中で生まれた成果や進行中のプロジェクトが紹介されました。
当日は、2025年秋プログラムの採択企業が未来に向けた共創事例を発表する「PITCH STAGE」と、さまざまなアイデアや技術を結集した事業共創を紹介する「EXHIBITION」の2つが実施されました。
クラウドケアは「EXHIBITION」(ブース展示)に参加をしました。
大盛況となったDEMODAYのようすを、レポートいたします!
- コロナ禍の悔しさを原点に「競争から協調」へ
- 2022年、東急との対話から始まった共創──JTOS誕生の経緯
- 箱根で進む実証実験 ユニバーサルツーリズムへの挑戦
- 「EXHIBITION」(ブース展示)について
- 小田急電鉄株式会社が語る構想 「旅行を諦めていた人に機会を」
- 株式会社西武ホールディングスが認識した現場課題 情報不足と視点のギャップ
- JTOSが描く未来 「移動できる人を増やす」社会へ
- 共創によって生まれる新たなエコシステム
- 「PITCH STAGE」(プレゼンテーション)も大盛況!
コロナ禍の悔しさを原点に「競争から協調」へ

開会挨拶に登壇したJR東日本スタートアップ株式会社 柴田代表取締役社長は、コロナ禍当時の苦い経験を振り返りました。
「移動を控えてください」。鉄道会社自らアナウンスせざるを得なかった状況に対し、「鉄道本来の役割を果たせなかった悔しさがあった」と語ります。
その想いから生まれたのが、「“鉄道×スタートアップ”で、ニッポンの未来を動かそう」という理念です。
この思いについて柴田社長は、「今も1ミリも変わっていない」と強調し、今回の取り組みの原点であることを示しました。
こうした思想のもと、鉄道会社同士が競い合うのではなく、共に社会課題に取り組む「協調」の姿勢へと大きく転換しました。
2022年、東急との対話から始まった共創──JTOS誕生の経緯

東日本旅客鉄道株式会社 萱沼徹さん(右)
今回の大きな特徴が、「JTOS」です。
「JTOS」とは、鉄道横断型社会実装コンソーシアムとして、JR東日本スタートアップ株式会社、東急株式会社、小田急電鉄株式会社、株式会社西武ホールディングスの4社が連携し、参画企業のリソース・アセットを活用した事業共創や社会実装を推進する取り組みです。
JTOSの構想は、2022年に始まった、JR東日本スタートアップ株式会社と東急株式会社との意見交換に端を発します。
鉄道各社が抱える課題には共通点が多く、それぞれが個別に取り組むよりも、連携した方が大きな価値を生み出せるのではないかという認識が共有されました。
そこに小田急電鉄株式会社、株式会社西武ホールディングスも加わり、現在の4社による体制が確立されました。
JR東日本スタートアップ株式会社の澤田さんは、「鉄道会社が抱える課題は本質的に同じ。それであれば一緒に解決すべきだ」と説明します。
また、スタートアップ側にとっても複数の鉄道会社に個別営業を行う必要がなくなり、より効率的に実証や導入を進められる点でもメリットが大きいといいます。
箱根で進む実証実験 ユニバーサルツーリズムへの挑戦
JTOSの具体的な取り組みのひとつが、現在、クラウドケアと連携して箱根エリアで進められている、ユニバーサルツーリズムの実証実験です。
テーマは、介助が必要な人や高齢者でも安心して旅行できる環境づくりです。
参考リンク:JR東日本スタートアップ、東急、小田急電鉄、西武ホールディングスと介護保険外サービスのクラウドケア、ユニバーサルツーリズムの実証実験を開始
JR東日本スタートアップ株式会社の澤田さんは、「駅に来ていただくのを待つのではなく、来られるようにする仕組みが必要」と語ります。
現状では、移動そのものを諦めている人が一定数存在しているとし、その層に新たな選択肢を提供することを目指しています。
社内の副業制度を活用し、駅業務などで培った「案内スキル」を持つ人材を介助領域に活かすなど、新たな人材活用の可能性も模索されています。
「EXHIBITION」(ブース展示)について

「EXHIBITION」は、デジタルブース、地域/地球ブース、企画/JTOSブースの3エリアに分かれて展示がされていました。
クラウドケアも参加をした、企画/JTOSブースをレポートします。

小田急電鉄株式会社が語る構想 「旅行を諦めていた人に機会を」

小田急電鉄株式会社の和田さんは、今回の取り組みについて「鉄道会社は、社会インフラとして新たな価値を生み出してきた歴史がある」とした上で、「スタートアップと連携することで、そのスピードを大きく高められる」と期待を示します。
箱根での実証実験を通じて、「すべてをフルサポートすると高コストになるため、一部を自己対応と組み合わせることで、より手軽に旅行できるサービスの実現を目指している」といいます。
このようなコストを抑えた新しいモデルが検討により「これまで旅行を諦めていた人にも機会を提供できるようになる」。
実際に、参加希望者の中には「外出を諦めていたが、実証を知りすぐ申し込んだ」という声もあり、潜在的なニーズの大きさを知ることとなりました。
株式会社西武ホールディングスが認識した現場課題 情報不足と視点のギャップ

一方、株式会社西武ホールディングスの盛さん、亀坂さんは、実証実験を通じて見えてきた現場の課題に言及しました。特に強調されたのが、「情報の不足」と「視点の違い」です。
例えばホテルにおいても、ベッドの高さや硬さ、浴室の仕様など、利用者にとって重要な情報が十分に提供されていないケースがあるといいます。
「一般的な利用者と、例えば車椅子を利用する人の視点は大きく異なる」とし、実証実験を通じて新たな気づきが得られていると語ります。
こうした課題は同時に、サービス改善や新たな価値創出につながる可能性も秘めています。今後は情報の整理と可視化を進め、他施設や他地域への展開も視野に入れています。
JTOSが描く未来 「移動できる人を増やす」社会へ

各社に共通しているのは、「移動の可能性を広げる」という視点です。
鉄道は人の移動を支えるインフラである一方で、現状では移動を選択できない人も多く存在します。
JTOSは、そうした人々に対して新たな機会を提供し、社会参加を後押しする仕組みづくりを目指しています。箱根での実証実験を起点に、鉄道会社同士の連携を横方向に広げることで、各地域での展開も期待されています。
共創によって生まれる新たなエコシステム
競争から協調へ──。鉄道業界が大きく方向転換する中で、スタートアップとの共創による新たなエコシステムが動き出しています。
「“鉄道×スタートアップ”で、ニッポンの未来を動かそう」という理念のもと、JTOSは今後、社会実装のスピードと範囲を拡大していくとみられます。
鉄道という巨大なインフラと、スタートアップの柔軟な発想が交差することで、これまでにないサービスや価値が生まれる可能性があります。その挑戦の行方に、引き続き注目です。
ユニバーサルツーリズムについてはこちら▼
「PITCH STAGE」(プレゼンテーション)も大盛況!

「PITCH STAGE」では、「地域共創」「デジタル共創」「地球共創(SDGs)」の 3 つをテーマに 2025 年 10 月から参加企業を募り、合計191 件の提案の中から 7 件が採択。各社プレゼンテーションをし、審査が行われました。
オーディエンス賞は、株式会社ECOMMIT、審査員特別賞は、株式会社スマートシティ技術研究所、優秀賞は株式会社Kailas Robotics、栄えあるスタートアップ大賞には、株式会社Thinkerが輝きました!
Thinkerは、ピッキングロボを活用した保線作業の効率化を図るスタートアップです。
保線作業において、これまで作業員が手作業で行っていたレール交換時の締結装置(レール固定クリップ)の配列・設置準備にピッキングロボを活用し、作業負荷の軽減と作業の効率化を図る、というものでした。
スタートアップ大賞受賞、おめでとうございます!
けあむすびでは、今後も、さまざまなイベントやセミナー等をレポートしていきます。
次回もお楽しみに!