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車いすでも旅行は楽しめる。ヘルパー同行で実現した箱根旅【介護保険外の自費訪問介護サービス 利用事例 23】

こんにちは、けあむすび編集部です。

今回お話を伺った宮川さんは、20代の女性で4年前に遺伝性筋疾患と診断され、現在は電動車いすを利用しながら生活されています。

今年6月には一人でシンガポールを訪れるなど、外出や旅行を楽しむ一方で、日本の宿泊施設や観光地のバリアフリーには多くの課題を感じてきたといいます。

今回、JTOSとクラウドケアが実施したユニバーサルツーリズムの実証実験では、クラウドケアのヘルパーとともに箱根への1泊2日の旅行に参加されました。

今回は、ヘルパーと旅行した感想だけでなく、当事者だからこそ感じる日本のバリアフリーの課題や、誰もが安心して旅行を楽しめる社会への思いについてお話を伺いました。

車椅子に乗る女性

車いすでも旅行は楽しめる。ヘルパー同行で実現した箱根旅
【介護保険外の自費訪問介護サービス 利用事例 23】

旅行が好きだからこそ、車いすでもっと自由に移動できる社会になってほしい

――宮川さんについて教えてください。


4年ほど前にGNEミオパチーという遺伝性筋疾患と診断されました。病気自体は生まれつきだったようですが、それまで受診が必要と感じるような症状はなく、学生時代は運動部で活動していたくらいです。
コロナ禍が落ち着いた2022年頃に「転びやすくなった」「階段が上れない」と感じるようになり病院で検査を受けた結果、病気が分かりました。
現在、歩行はT字杖一本だと頼りなく、他人にやや支えてもらうか壁伝いなどであれば可能で、基本的に移動は電動車いすを利用しています。旅行は今でも大好きです。今年6月には一人でシンガポールへ行きましたし、その前には京都や奈良にも一人で旅行しました。
病気は少しずつ進行していくため、一人で旅行できる時間には限りがあるかもしれないという思いもあります。だからこそ、今行けるうちにできるだけいろいろな場所へ行きたいと思っています。
電動車いすを使うようになってからは、以前よりも外出する機会が増えました。杖で歩いていた頃は「途中で転んだらどうしよう」という不安があり、一時期は外出そのものを控えていました。
今は「せっかく移動しやすくなったのだから外へ出よう」と考えるようになり、電車や飛行機も積極的に利用して外出しています。

ホームにつく赤い電車

今回の旅行は鉄道などの公共交通機関を中心に移動

――普段旅行へ行かれる際には、どのような準備をされていますか。

 

旅行へ行く前は、よく下調べをします。
例えば新幹線を利用する場合は、車いすでの乗車方法や駅員さんへの依頼方法、車いす対応座席の予約方法などを事前に確認します。海外旅行では、空港からホテルまでの移動手段や、現地の公共交通機関がバリアフリーに対応しているか、介護タクシーを利用できるかなども調べます。
今年6月にシンガポールへ行った際も、YouTubeなどで現地の動画を何本も見ながら、「ここなら車いすでも移動できそう」「ここは介護タクシーを利用した方が安心そうだ」と、一つひとつ確認しながら旅行の計画を立てました。
ただ、どれだけ調べても分からないこともあります。観光地のちょっとした段差や坂道の傾斜などは、ホームページに掲載されていないことがほとんどです。
私の場合、5センチほどの段差でも電動車いすでは進めなくなることがあるため、実際に現地へ行ってみないと分からないことも多く、もし通れなかったら、その場所は諦めようと思いながら旅行することもあります。
宿泊先を選ぶときも、できる限り情報を集めます。
旅行をする中で感じているのは「バリアフリー対応」と書かれていても、実際には車いす利用者にとって使いやすいとは限らないということです。海外の友人とも日本の宿泊施設について話すことがありますが、よく話題になるのがお風呂です。
海外では、車いすからそのまま移乗できるロールインシャワーを備えたホテルも多い一方、日本ではまだほとんど見かけません。また、重たい開き戸も車いす利用者にとっては大きな負担になるため引き戸かどうかなども確認しますね。
そのため、バリアフリーという表示だけで安心するのではなく、自分にとって本当に利用しやすい環境なのかを調べた上で、宿泊先を選ぶようにしています。

展望スポットでカメラをかまえる車椅子の女性

小田原城も見える展望スポット

「自分のため」だけではなく、当事者の声を社会に届けたいと思った

――今回の実証実験に参加されたきっかけを教えてください。

 

理由は大きく二つあります。
一つ目は、自分の病気が進行した将来を考えたときに、ヘルパーと一緒に旅行をするという選択肢が、本当に現実的なものなのかを知りたかったからです。今はまだ一人で旅行へ行くことができますが、病気は少しずつ進行していきます。
「一人では難しくなった時でも、旅行を諦めなくていい方法があるのか」それを自分自身で体験してみたいと思い、今回の実証実験に応募しました。

もう一つは、旅行を通して感じてきた課題を、当事者の立場から伝えたいと思ったからです。普段から旅行をする中で「ここがもう少し改善されれば、もっと多くの人が旅行を楽しめるのに」と感じる場面がたくさんありました。

今回の実証実験は、ヘルパーと一緒に旅行を体験するだけではなく、移動や宿泊、観光など旅行全体を通して見えてくる課題や、逆に良かった点を当事者の目線で伝えられる貴重な機会だと感じ、応募しました。

 

――今回の箱根旅行でヘルパーが同行したことで、特に助かったことを教えてください。

 

まず大きかったのは、荷物を持っていただけたことです。今回は一泊二日だったので荷物はそれほど多くありませんでしたが、旅行日数が長くなるほど荷物も増えます。一人で旅行をすると宅配便で送ることも多いのですが、ヘルパーさんが一緒にいてくださることで、その負担が大きく減ると感じました。
また、宿泊先でも助けていただく場面がありました。部屋の家具の配置を調整すると、車いすでもより移動しやすく、過ごしやすい環境になるため、ヘルパーさんに調整いただきました。
もし一人だったらホテルスタッフの方へお願いしていたと思いますが「これもお願いしていいのかな」と遠慮してしまったかもしれません。そうしたサポートを気兼ねなくお願いできたことは、とても心強かったです。
さらに印象に残っているのが、箱根登山鉄道での出来事です。強羅駅ではホームに傾斜があり、乗り降りには駅員さんとヘルパーさんが協力してくださいました。もし一人だったら、降りること自体を諦めていたかもしれません。
旅行では、事前に調べても分からないことが必ずあります。だからこそ、その場の状況に応じて柔軟に対応してくれる人がいることは、大きな安心につながりました。

ヘルパーさんが一緒だったからこそ「少し難しいかもしれない」と思っていた場所にも安心して挑戦できたと感じています。

箱根のホテル

実証実験の宿泊先であるザ・プリンス 箱根芦ノ湖

本当の意味でのバリアフリーの実現に役立ちたい

――今回の旅行を通して感じたことを教えてください。

 

今回の実証実験では、ヘルパーさんと一緒に旅行をすることで、安心して旅行を楽しめることを実感しました。

その一方で、旅行を通して改めて感じたのは「バリアフリー」という言葉の広さです。宿泊施設や観光地、交通機関など、それぞれで工夫は進んでいますが、実際に利用する当事者の立場から見ると「もう少しこうだったら使いやすいのに」と感じる場面はまだあります。だからこそ、当事者の声をもっと社会へ届けていくことが大切だと感じました。

私は今年9月からは会社の休職制度を利用し、イギリスの大学院で障害福祉について学ぶ予定です。イギリスは障害福祉やインクルーシブなまちづくりが進んでいる国の一つです。
当事者の視点を大切にした制度や考え方を学び、日本でもより良いバリアフリーやユニバーサルツーリズムの実現に何かしらのかたちでつなげていければと思っています。

 

海賊船と車椅子の女性

海賊船にも乗船

介護保険外サービスで、誰もが「行きたい場所へ行ける」社会を目指して

近年ユニバーサルツーリズムという言葉を耳にする機会が増えてきました。
今回、宮川さんのお話を伺って改めて感じたのは、本当の意味でのバリアフリーは実現できていないということです。安心して移動し、宿泊し、観光を楽しめる環境づくりには、当事者の声を反映していくことに加え、その人に寄り添う人的なサポートも必要なのかもしれません。
クラウドケアでは、通院や買い物だけでなく、旅行やお出かけにもヘルパーが同行し、一人ひとりの状況に合わせたサポートを提供しています。
障がいや介護が必要になっても「行きたい場所へ行く」という選択肢を諦める必要はありません。今回の宮川さんのインタビューは、誰もが自分らしく旅行を楽しめる社会とは何かを改めて考えるきっかけとなりました。

前回のインタビューはこちら▼

著者:けあむすび編集部

介護専門メディア「けあむすび」は、株式会社クラウドケアが運営する介護専門メディアです。