こんにちは、けあむすび編集部です。今回は、介護保険外サービス「Crowd Care(クラウドケア)」で、ヘルパーとして活躍をする逢坂さんにインタビューを行いました。

旅行介助士・逢坂さんが伝えたい“心のバリア”を越える支援。
「行きたいけど行けない」を「行ける」に変える。
【介護保険外の自費サービス ヘルパーインタビュー#14】
介護の現場では、制度の枠の中でできることが決まっています。「本当はこうしたいのに」と感じる瞬間も少なくありません。
介護保険サービスの施設介護と在宅介護の両方を経験し、現在は介護保険外サービスの現場に挑戦する逢坂さん。
逢坂さんが今力を入れているのは、ユニバーサル・ツーリズムと呼ばれる、「旅行の同行支援」という分野です。
「行きたいけど行けない」を「行ける」に変える——その鍵は、段差などの“物理的な壁”だけではなく、遠慮や不安といった“心のバリア”にも向き合うことだといいます。
逢坂さんのキャリアと実体験を通して、保険外の働き方が開く新しい選択肢を聞きました。
- 外食20年から、介護の世界へ。コロナ禍が変えたキャリア
- 「在宅の暮らし」とつながる介護。小規模多機能で感じた面白さ
- 「旅に同行する介護」という選択肢。旅行介助士として広げたい世界
- けあむすび編集部より
外食20年から、介護の世界へ。コロナ禍が変えたキャリア
――逢坂さんはもともと異業種から、介護に入られたと伺いました
私は北海道の出身で、大学入学とともに上京しました。大学では経営学部で、経営を学んでいました。
卒業後、最初に入ったのは大手外食チェーンです。
店長も経験して、経営にも関心がありました。
その会社の中では、介護保険制度が始まった時期に高齢者事業にも関わりができて、グループ内の研修などで介護の話を聞く機会もあったんです。
経営が厳しくなって利用者さんが行き場を失うような話を耳にしたり、制度にもいろいろ課題があるんだなと見ていました。
それからもずっと同じ会社で働いていて、本社の管理職も経験しました。
ですが、コロナで外食産業が打撃を受けて。私も出向という形で介護のグループホームに行くことになりました。2021年のことです。
介護のスキルもないので、最初は話し相手をしたり散歩に行ったり、配膳をしたり。
慣れてきて食事介助や排泄介助も教わりながらやっていきました。半年くらいですね。
その後、小規模多機能施設へ出向することになりました。

「在宅の暮らし」とつながる介護。小規模多機能で感じた面白さ
――まったくの未経験から、介護に関わることになったんですね
はい。小規模多機能施設は、通い(デイサービス)と泊まり(ショートステイ)と訪問の“3点セット”が連動しています。
私の中では介護=施設のイメージが強かったんですが、在宅での普段の暮らしを見ながら、デイサービスの場で関わるのが面白いと感じ始めたんです。
その後、小規模多機能施設の責任者の方から、「うちに入社しませんか」と声をかけてもらって。
大手外食チェーンを退職して、小規模多機能施設の職員として入社し、2年ちょっと働きました。
働きながら介護福祉士も取得して、そこから今の働き方に近づいていきました。
「旅に同行する介護」という選択肢。旅行介助士として広げたい世界
――逢坂さんがいま力を入れているのが、旅行の同行支援ですよね。
はい。私は、旅行介助士という資格を持っていて、ユニバーサル・ツーリズムを推進しています。今は、フリーランスの旅行介助士、という働き方です。
通院付き添いや外出支援のニーズは増えていますし、旅行も「行きたいけど行けない」という方が確実にいます。
旅行に同行する支援は、呼び方もいろいろあります。
旅行介助士、旅行介護士、トラベルヘルパー、シニアエスコート…名称が違っても「行きたい」を支えるという点は共通しています。
――「ユニバーサル・ツーリズム」というのは、どういうものなのでしょうか?
一言でいうと、年齢や障害の有無に関係なく、誰もが安心して旅行や外出を楽しめる社会を目指す考え方です。
段差やトイレといった“設備(ハード)”の整備だけではなく、情報発信や受け入れ体制、接客・介助の工夫(ソフト)も含めて整えていくのが特徴ですね。
――「バリアフリー旅行」とは違うのですか?
近い部分はありますが、バリアフリーはどちらかというと物理的な障壁(段差など)をなくすイメージが強いですよね。
ユニバーサル・ツーリズムはそれに加えて、「行けるはずなのに不安で諦めてしまう」「受け入れ側が対応に自信がなく断ってしまう」といった“心のバリア”も含めて越えていく考え方なんです。
だからこそ、旅行介助士のように“間に入れる人”がいることも、すごく大事になってきます。

――逢坂さんが感じる、いまの福祉の課題ってどんなところにありますか?
福祉って、どうしても「最低限の支え=セーフティネット」という捉え方になりやすいと思うんです。
もちろんそれはすごく大事なんですけど、それだけだと「行きたい」「やってみたい」みたいな希望の部分が後回しになってしまうことがある。
たとえば旅行もそうで、「障害があるから」「高齢だから」と、最初から“無理”に寄せてしまうのではなくて、支え方があれば行けるケースもあるんですよね。
福祉だからってチャンスを与えない、じゃなくて、本人が選べる状態をつくるほうがいいと思っています。
――選べる状態をつくる、というのは具体的には?
情報があって、受け入れ側の準備があって、必要なら同行できる支援者がいる。
そうすると「行けない」が「行ける」に変わることがある。
選択肢を増やすって、結果的にその人の人生の可能性を広げることにつながると思うんです。
――実際に同行したとき、印象に残っていることはありますか?
私が、旅行介助士の資格をとるきっかけとなった旅行ですね。
クラウドケアで、2泊3日、視覚に障害のある方とご一緒したときです。東京駅から新幹線で移動して、ホテルで過ごすプランでした。
食事がバイキングのときは、「どれが好きですか?」と聞きながら私が取ってきて、席では“クロックポジション”で「12時の方向に卵焼き、3時の方向におかず」というふうに位置を伝えると、安心して食べられるんです。
やりながらコミュニケーションを掴んでいく感覚でした。
ほかにも、高齢のご夫婦で、軽井沢の別荘に最後になるかもしれないから行きたい、というご依頼もありました。
そのときに、「本当に、あなたがいてくれたおかげで、ここに来られたわ」とおっしゃっていただいて。
その言葉が、「心からのありがとうをいただいた」という経験になりました。
あれは本当に大きかったです。「支援があれば旅はできる」と確信しました。
“物理の壁”だけじゃない。「心のバリア」を越えるために
ーーさきほどお話しのあった、「心のバリア」とは、どういうことでしょうか?
段差みたいな物理的な問題だけではなくて、「迷惑をかけそう」「大丈夫なのかな」と遠慮したり不安になったりして、気持ちの面でブレーキがかかってしまう状態です。
受け入れる側も「段差があると書いたら来なくなるかも」と情報を出しにくかったりして、結果的に“行けるはずなのに行けない”が生まれてしまうんですよね。
ーーその心のバリアを減らすには?
受け入れる側については、まずは情報をきちんと出すことだと思います。
段差や導線、トイレの場所などが分かれば対策が立てられますし、介助者が同行するなど“できる方法”も組み立てやすい。
そこに旅行介助士のように間に入れる人がいると、「行けない」が「行ける」に変わっていくと思います。
――福祉職の方が「旅行の同行」のような支援に関わってみたいと思ったら、まず何から始めるのがいいと思いますか?
いきなり旅行、ではなく、まずは通院の付き添いとか、外出の付き添いみたいな“小さい移動”から始めるのがいいと思います。
施設の中の介助と、外に出たときの介助って、見える景色も必要な配慮も全然違うんですよね。
――たしかに、外に出ると想定外なことも増えそうです。
そうなんです。小さい移動を重ねていくと、ご本人の中でも「次はここに行ってみたい」「こういうこともできるのかな」っていう“問い”が自然に生まれてくる。支える側も、その問いに向き合う中で引き出しが増えていきます。
だからまずは、身近な外出から一歩ずつ、がいいと思います。
――最後に、逢坂さんから、メッセージをお願いします。
私自身、最初はゼロからのスタートでした。 最初はただ「単発で仕事を受ける」というところから始まって、介護のスキルや旅行介助の知識はあっても、それをどう仕事として形にするかが分からなかった。技術はあるのに、なぜか一歩踏み出しきれない——そんな感覚がずっとあったんです。
転機になったのは、介護や福祉のスキルをビジネスとして捉え直す視点を持てたことです。ケアの技術と、働き方・集客・自分のポジショニングといったビジネスの考え方が結びついた瞬間、「あ、これで自分の力で立っていける」という感覚が生まれました。スキルは道具で、ビジネスマインドはその道具を使いこなすための地図——そういうイメージでしょうか。
だからこそ、いま何かを探していたり、関心はあるけど一歩踏み出せずにいる人の気持ちも分かるつもりです。
人生100年時代ですから、「行きたい」を「行ける」に変えて、諦めを希望に変える——そういう関わり方が、福祉の中でももっと増えていい。
私は異業種から来たからこそ、既成概念に風穴を開けるようなチャレンジを続けたいと思っています。私のような猪突猛進のひとがいてもいいのかなと(笑)
旅行介助士という働き手が増えれば、行きたいのに行けない人が“行ける”に変わっていく。それが、社会貢献につながっていると信じています。

けあむすび編集部より
逢坂さんは、東京都のアクセシブル・ツーリズム(ユニバーサル・ツーリズム)のモニターツアーにも関わり、車椅子の方でもトレッキングを楽しめるような実証の場に参加した経験があるといいます。
車椅子を、前で引っ張る補助器具などを活用し、旅先での課題を洗い出しながら「誰もが旅を楽しむ」ためのヒントを蓄積していく——。現場には、少しずつ選択肢が増えている実感があるそうです。
今後の逢坂さんのご活躍をお祈りいたします。